鴻巣友季子『本の寄り道』を読んで

鴻巣友季子さんの『本の寄り道(河出書房新社)を読んで、いくつかの感想を持ちました。今日はまずそれから。

1. 鴻巣さんは翻訳者ですが、素晴らしい書評家でもあります。それはこの一冊を読むとわかります。私が鴻巣さんを知ったのは翻訳からでなく、新聞の書評からです。

2. 何の本についての書評だったか? 定かではありませんが、きっちりと読み込んで書いていたという印象が残っています。そこから鴻巣さんの書評に興味を持ち、以来鴻巣さんの本を読んでいます。

3. いい書評は読者を刺激し触発する! いい書評は本との出会いを企画するだけでなく、人との出会いも演出する! これは鴻巣さんのみならず、例えば坪内祐三さんの書評にも言えることです。

鴻巣友季子さんの本】

本の寄り道          全身翻訳家 (ちくま文庫)
 
 
孕むことば          カーヴの隅の本棚


4. 私もこの本を読んで、新しい書き手に出会うことが出来ました。この二人の作品を読んでみたいと思いました。一人は『空に引き寄せる石』の詩人の蜂飼耳さん。もう一人は写真家・作家の星野博美さん。

5. 鴻巣さんは蜂飼耳さんについて、次のように書いています。

詩人は景色を言葉に碾(ひ)く風車だ ― エッセイ集『空を引き寄せる石』を読んでいると、そんな名言を思い出す。著者は石と語らい、それが破れるのを眺め、盲腸を切られ、キャベツに笑われたりする。詩人の眼は清冽で澄んで、日常に一瞬のぞく異世界を、生まれたてのことばが捉える。いまここに、ひとつの石が、サボテンが、古本があることの奇跡にハッとさせられるような「詩集」。この私的衝撃はどんな言葉で訳されても、輝きが褪せることはないだろう。p99

【蜂飼耳さんの本】

空を引き寄せる石          孔雀の羽の目がみてる
 
 
秘密のおこない          紅水晶


6. また、星野博美さんについては次のように書いてます。

写真家もまた、眼でものを截(き)りとる。すごいカメラマンというのは、たいてい散歩の達人、迷子上手である。『迷子の自由』は東京、インド、重慶の街を歩いて見つめたフォト・エッセイ集だ。星野さんは九龍城でも満員電車でもファミレスでも、心のシャッターを切っている。消去容易なデジカメの時代にあっても、彼女にとって写真を「とる」というのは、まったくとり返しの付かない行為だとわかる。そんな毅然としたまなざしの写真であり文章だ。p99

星野博美さんの本】

コンニャク屋漂流記          転がる香港に苔は生えない (文春文庫)
 
 
銭湯の女神 (文春文庫)          のりたまと煙突 (文春文庫)

7. この二人の紹介文で、やはり読んでみたくなりました。この二人の名前は知っていたのですが、作品を読んでいませんでした。早速アマゾンを調べました。本の解説等から、次の本を選びました。愛読者の皆さんは何を薦めるのでしょう。