中原佑介美術批評選集

本よみうり堂の書評欄でこんな記事を見つけました。「御三家」といえば、なるほど戦後美術批評の「御三家」です。美術に関心のある人ならば、必ず読んだことのある方々です。

 既に他界していた東野芳明に続き、昨年の針生一郎、今年は中原佑介と、相継(あいつ)いで亡くなった。中原氏とは昨年、瀬戸内で開かれたシンポジウムで同席し、帰りの車で話したのが最後となった。日本の美術批評は新しい段階を迎えた。

美術批評家・多摩美大教授 椹木野衣さんはこう書き、そして中原裕介さんの美術批評をこう評しています。

 それは「批評」という語を一九世紀までの「思考」と対比しているのにも明らかだ。著者にとって美術批評とは、作品への絶対的な価値観の吐露でも、理路整然とした体系でもありえなかった。作品と同様、動的に運動しながら、ともに創造していく。氏の好んだ別の言葉を使えば「発明」だった。確かに、単なる物としての「機械」に創造的な揺らぎはない。

「作品と同様、動的に運動しながら、ともに創造していく」なかで、新しい何かを創りだしていくことこそ、中原さんが一番大事にしたことでした。中原さんにとって何かを創造することは「発明」でした。おそらく、いや確かに。

その一連の「発明」が『中原佑介美術批評選集』として残されました。この批評を読み解くのは次の世代の方々です。

創造のための批評: 戦後美術批評の地平 (中原佑介美術批評 選集)          「人間と物質」展の射程: 日本初の本格的な国際展 (中原佑介美術批評 選集)
 
上段:『中原佑介美術批評選集』1・5
下段:椹木野衣さんの本『シミュレーショニズム』と『日本・現代・美術』
 
シミュレーショニズム (ちくま学芸文庫)           日本・現代・美術