日高普『精神の風通しのために』
毎日jp「毎日の本棚」の「今週の本棚」で、鹿島茂さんが日高普著『精神の風通しのために』を取り上げていました。かつて読んだ本は創樹社の本でしたが、出版社を見ると青土社になっていました。
この点が気になったので、ネットで検索をすると、今年7月に青土社から日高普著『精神の風通しのために』が出版されていました。
■ 日高普
1923年、福岡県生まれ。1950年、東京大学文学部卒業。法政大学経済学部教授を経て、名誉教授。経済学博士。専門は、経済原論。書評、映画評論も手がける。2006年没。
■『精神の風通しのために』
知の巨人の航跡 精神、思想、情念の銀河宇宙 思想・宗教・歴史・文学から、映画・音楽・美術あるいは数学や動物学まで。百科全書的好奇心と学識と透徹した眼差しで万象の真相に迫る――。資本論研究の第一人者にして名書評家として知られた筆者の評論にみる、精神の柔軟さ、明晰さそして公平さの軌跡。
■ 中村稔さんの跋文の一部を帯から引用。
「 本書に収められた文章の多くは日高が浜田新一というペンネームで発表したものであり、私が日高と親しく往来していた時期の作品であり、それだけに私を往時への回想に誘ってやまない。日高の表現によれば、『世代』(46年7月創刊され、52年12月に17号で終えた同人誌)は『目黒書店をお払い箱になった』ということだが、それ以後の『世代』、つまり同人サロンから同人雑誌となっていった時期の『世代』の中心は、疑いもなく日高普その人であった。
その当時でも、矢牧一宏、吉行淳之介、小川徹、清岡卓行、橋本一明、大野正男といった人々がいわば常連だったから、その誰が『世代』の会合の中心となっても、ふしぎでないような絢爛たる才能の集まりであったわけだが、それでも日高が『世代』の中心であったことを疑うものはないはずである。」
鹿島さんは日高さんの著書を高く評価して、次のように書いています。
表題にあるように、なによりも「精神の風通し」のよさを重んじ、マルクスは評価してもマルクス主義のドグマからは自由で、あらゆる分野の事象の謎を自分の頭で考えるために読書をこよなく愛した二〇世紀日本最後の「知の巨人」の全貌を知るための好著。
この本 (創樹社)を持っていたのですが、すでに売れてしまい、手元にありません。改めて、鹿島さんの書評を読むと、売らなければよかったと思いますが、時すでに遅し。仕方がありません。
しかし、日高さんの本をもう一冊持っています。『本にまたがった旅』 (創樹社)という日高さんの書評集です。この一冊、売るつもりはありません。