向田邦子さん急逝から30年
今日で向田邦子さん(51)が台湾の飛行機事故で亡くなって30年が過ぎました。今日の朝日新聞と日経新聞のコラムで、ともに向田さんのことを取り上げていました。
朝日の「天声人語」は向田さんを「己を笑う強さと優しさは時代を超えて愛される」人、「小さな幸せを書かせたら独壇場だ」と高く評価していました。私は次の言葉をメモしました。
〈花ひらき はな香る 花こぼれ なほ薫る〉。
これは向田ドラマによく出演していた森繁久弥さんの言葉で、多磨霊園の墓碑に記されているそうです。本当に上手い。向田さんを的確に言い当てている言葉だと思います。
同じ向田さんを取り上げ、さらに上手くまとめているのが日経新聞の「春秋」です。
同時代を生きた演出家の久世光彦は「どこにもいそうで、どこにもいない、そんな人だった」と記した。誰にも書けそうで、誰にも書けないものを残した人でもあった。愛嬌(あいきょう)やユーモアも、不思議に古びていない。秘めた恋の相手への手紙にこうあった。「メンドクサイヤ。―これが私のキャッチフレーズです」
久世さんの言葉も言い得て妙ですが、最後の私のキャッチフレーズは向田さんのまさに真情です。私はこのひと言で「春秋」を再読しました。あっという間の30年、森繁さんも、久世さんも、いなくなってしまいました。