管啓次郎さんの「昨日の言葉」

管啓次郎さん *1 の「Mon pays natal」で、4月ぐらいからか、「昨日の言葉」と題して記事を掲載しています。

これはおそらく管さんが読んだ本の中から、気になる文章を引き、ブログに載せているのだと思います。その文章を読みながら、いろいろなことを考えさせられ、またいろいろなことを考えます。いい文章はずばり本質を衝きます。

4/19「昨日の言葉 16」より。

吉田[健一]の親切に報いようと、私は彼が書いた批評の一つを翻訳しようと思ったことがあった。しかし、それは極めて難しいということがわかった。吉田は書こうと思えば、非の打ちどころのない英語で批評を書くことが出来た。しかし日本語で書く時には、かりにわかりやすさを犠牲にしても、出来るだけ日本語らしい文体で書こうとした。吉田を満足させるような翻訳は到底無理だと諦め、私は自分の翻訳を発表しようとしたことは一度もない。(ドナルド・キーン/角地幸男訳)

この文章を読んで、ドナルド・キーンさんが ・・・・・「私は日本という女性と結婚」と永住へ帰化手続きを始めたといいます ・・・・・ 吉田健一さんをどれだけ深く理解し、尊敬の念を持っていたか、が十分わかります。

まず言葉ありき。言葉を織り合わせることで文章を構成します。独自の文体でその織物を仕立てます。そして出来上がった着物を着付けます。「昨日の言葉」が私の、今日の言葉に、また未来の言葉になります。

1冊の本はこれからもその役割を失わずに、自分の生を支えてくれるだろう。ページをめくって文字を追う。そこから広がる世界には、過去も未来も含めた限りない未知の荒野が続いて終わりがない。p22


ページをめくることは、ぼくにとって荒野を歩くことそのものなのだ。p18


写真家 石川直樹*2


全ての装備を知恵に置き換えること (集英社文庫)      石川直樹 写真集 Mt.Fuji      いま生きているという冒険 (よりみちパン!セ)


*1: 明治大学大学院理工学研究科新領域創造専攻ディジタルコンテンツ系教授。研究室では「コンテンツ批評」と「デザイン人類学」を2本の柱として研究を進めています。5/19、管啓次郎小池桂一著『野生哲学──アメリカ・インディアンに学ぶ』講談社 840円 が出版予定。

*2:池澤夏樹編『本は、これから』(岩波新書)の「歩き続けるための読書(石川直樹)」より引用。石川直樹さんのHPはここをクリック。