長田弘 『本を愛しなさい』 みすず書房

本を愛しなさい、と
人生のある日、ことばが言った。
そうすれば百年の知己になる。
見知らぬ人たちとも。
風を運ぶ人とも。
死者たちとも。
谺とも。




 日々というのは、たくさんの瑣事でできている。そのどの一つも適当でいいんだと考えておろそかにしてしまえば、たちまち、じぶんというわずかな元手を失くしてしまう。じぶんがなんという阿呆になってしまうのだ。なぜなら、モリスが言ったように、幸福の秘密は、日々のあらゆる瑣事に対して新鮮な関心をもってかかわるということのうちにあるからだ。「犬とリンゴと本と少年」p28