連鎖・派生・生成する読書

いつも本を読んでいると、その本の中で、紹介された本が読みたくなります。そして、それを読んでいると、またその中の、というように読書は連鎖し、派生します。

連鎖する読書は単数・直列・集中型であり、派生する読書は複数・並列・分散型です。この連鎖と派生を繰り返す中で、読書が進みます。

たとえば、宮川淳さんは『紙片と眼差とのあいだに』(水声社)で一冊の本を読むことについて、次のように書いています。

<読むとき、われわれは単に一冊の本を読んでいるのではないだろう。そこには同時に複数の読むこと(過去の、しかもまた未来の)が参加しているのであり、そこではすでにひとつのテキストが書かれている。>p99

連鎖的読書は一冊を深く読み込むことであり、派生的読書は一冊から多数へ広く読み込むことです。浅くから深く、狭くから広くの読書から新しい生成的読書が生まれます。

それはいま、複数の過去を読むことでもあり、それはいま、複数の未来を読むことでもあります。それはまた、現地を読むことでもあり、それはまた、世界を読むことでもあります。

作者は書くことを、読者は読むことを通して、<すでにひとつのテキストが書かれている>ことになります。われわれは常に生成しつつある新しいテキストを読むことになります。

On Reading       On Reading

Andre Kertesz "On Reading"
(left:hardcover right:paperback)