今週の本棚・この人この3冊

毎日jp > エンターテインメント > 毎日の本棚で掲載している「今週の本棚・この人この3冊」。今週は道尾秀介さんが選ぶ久世光彦さんの3冊です。

<1>怖い絵(久世光彦著/文春文庫/品切れ)
<2>聖なる春(久世光彦著/新潮文庫/品切れ)
<3>雛(ひな)の家(久世光彦著/中公文庫/880円)

道尾さんも書いていますが、久世さんが亡くなって、もう5年! 早いものです。上記3冊を見ると、そのうち2冊がなんと品切れ?といいます。読もうとすると、図書館で借りるか、古本屋を探すしかありません。

道尾さんさんは久世さんの随筆と小説を読んで、

随筆からは

<久世さんというのは多くの人と愛し愛されし、憎み憎まれし、涙や言葉を交わし合い、感情の種を無数に抱えながら生きて死んでいった人だ>、

小説からは

<抱えていた感情の種を、生前久世さんは小説という土壌に蒔(ま)いた。そこにはときに清らかで美しい花々が咲き、ときには妖(あや)しく狂おしい色の花が地面を覆い尽くした。それが久世さんの遺(のこ)した、素晴らしい小説群だ>

といいます。

そして、<聴き心地はいい>音楽(作品)を好む人が多くなっていく中で、<激しい息遣い>が感じられる音楽(作品)が絶版(品切れ)になっていく。この現状に対して、次のように言います。

<これでいいのだろうか。出版社や書店は、ひとつ商魂とバンカラ魂とを秤(はかり)にかけて、熱い息遣いの感じられる小説たちを、もっと世に広めてくれないだろうか。>

<ひとつ商魂とバンカラ魂>とを秤にかければ、私もバンカラ魂=熱い息遣いの感じられる小説を支持したい。

怖い絵 (文春文庫)     聖なる春 (新潮文庫)     雛の家 (中公文庫)