永井荷風『あめりか物語』より

唯だ行かんが為めに行かんとするものこそ、
真個(まこと)の旅人なれ。心は気球の如くに軽く、
身は悪運の手より逃れ得ず、如何なる故と
も知らずして、常に唯だ、行かん哉、行か
ん哉と叫ぶ。
(旅−ボードレール)