まだまだあるぞ、読みたい本

オンライン書店e-hon 本 CD DVD」のなかで「新聞・TVで話題の本」を紹介しています。このサイトはテレビ書評として「王様のブランチ」と「週刊ブックレビュー」を、新聞書評として朝日、日経、毎日、読売の4紙の書評を取り上げています。

朝日、日経以外の新聞書評で取り上げていた本はこのサイトを見るようにしています。また、先日紹介しました中日/東京新聞の書評もいいのでアンテナに追加しチェックするようにしました。

読売新聞(「本よみうり堂」)の書評で取り上げた本を見ていると、ノーマークの本で、読みたい本はまだまだあります。

例えば。

  • 椎根和  『popeye物語 若者を変えた伝説の雑誌』 新潮文庫 500円

<“VANが先生だった”“気分はもう夏”“僕らはこんなモノが欲しいのだ”―。1976年6月に創刊された“シティボーイのためのライフ・スタイル・マガジン”は、60年代の反米気分に嫌気が差した若者たちに熱狂的に受け入れられた。編集長・木滑とそこに集う風変わりな才能たちによって創り上げられた誌面は、今なお伝説として語り継がれる。日本の風俗を一新した雑誌の神話的内幕。>

今のマガジンハウスは数多くの雑誌神話を築いてきました。そのなかでも「popeye」は<シティボーイのためのライフ・スタイル・マガジン>として大いに読まれました。かつて「シティボーイ」という言葉が時代の先を行っていました。時代が言葉に追いつくと、言葉は死語になります。

椎根さんの文庫は『平凡パンチ三島由紀夫』 (新潮文庫)に続き、2冊目です。( 左が文庫本の、右が単行本の表紙。)

popeye物語―若者を変えた伝説の雑誌 (新潮文庫)        popeye物語―1976~1981


平凡パンチの三島由紀夫 (新潮文庫)        平凡パンチの三島由紀夫


        


<「海炭市叙景」は、90年に自死を遂げた作家、佐藤泰志(1949−90)の遺作となった短編連作です。海に囲まれた北の町、「海炭市」(佐藤の故郷である函館市がモデルです)に暮らすさまざまな人々の日常を淡々と描き、落ち着いた筆致の底から、「普通の人々」の悲しみと喜び、絶望と希望があざやかに浮かび上がってきます。この作品が執筆された当時はいわゆる「バブル」時代でしたが、地方都市の経済的逼迫はすでに始まっていました。20年の歳月を経て、佐藤泰志が描いたこの作品内の状況は、よりリアルに私たちに迫ってくると言えます。
※編集担当者からのおすすめ情報 映画「海炭市叙景」は、東京国際映画祭コンペティション出品作です。12月から渋谷ユーロスペースで上映予定。以後、全国数十館でも上映の予定です。文庫刊行と映画化を記念したイベントも計画中です! >

この文庫はこうした書評で取り上げてもらうか、読んだ人が紹介するかしないと、いつの間にか人知れず消えていくことになってしまいます。そうした文庫は多々あります。だから、書評というものが必要になります。いい本を人に知ってもらうこと。これも書評の役割です。

[追記]
週刊文春』10月21日号「文庫本を狙え!」で坪内祐三さんが佐藤泰志海炭市叙景』を取り上げていました。

海炭市叙景 (小学館文庫 さ 9-1)        佐藤泰志作品集


<一九五八年、北九州筑豊の地で、職場や地域のサークル運動に大きな影響を与えた『サークル村』が刊行された。谷川雁森崎和江と共に、この雑誌の中心となったのは、「筑豊文庫」と名付けた自宅を拠点に活動した上野英信(一九二三〜八七)であった。その一人息子である著者が、戦後を代表する記録作家であった英信と彼を支えた母・晴子の思い出、さらには著者の幼い頃からの回想を交えて、筑豊とそこに住む人々を描いた珠玉のエッセイ集。英信の葬儀の時、大量の本を入れたために大変な火葬になった表題作など二七篇を収録。>

上野英信。懐かしい名前を見ました。谷川雁さん、森崎和江さんと関わり、サークル運動を推進した人です。筑豊の炭鉱労働者の自立共同体・サークル村を結成し、機関誌『サークル村』を刊行し、同誌から石牟礼道子さんや中村きい子さんらを輩出しました。

父を焼く――上野英信と筑豊        蕨の家―上野英信と晴子


地の底の笑い話 (岩波新書 青版)        追われゆく坑夫たち (岩波新書 青版 391)