榎本泰子 『上海』

久しぶりに中公新書を読みました。榎本泰子さんの『上海』です。「上海」というと、芥川龍之介『上海游記 江南游記』、松本重治『上海時代』、堀田善衛『上海にて』、林京子『ミッシェルの口紅』『上海』等を連想します。

榎本さんはすでに2006年に『上海オーケストラ物語』(春秋社)から出版され、その経験があったので、今回の『上海』を書き上げたと「あとがき」で書いてあります。

<中国の1000年は西安を見ればわかる。500年は北京を見ればわかる。100年は上海をみればわかる。>といわれます。その100年をみるために多国籍都市、上海を取り上げています。

今年は上海万博があり、上海は注目の都市です。上海租界の100年を追うことで、歴史と社会を各章ごとわかりやすくまとめています。上海を知らない人の入門書としても、また上海の歴史と社会をよりよく知るためのガイドブックとしても活用できます。

第1章 イギリス人の野望
第2章 アメリカ人の情熱 
第3章 ロシア人の悲哀
第4章 日本人の挑戦 
第5章 ユダヤ人の苦難 
第6章 中国人の意志

この新書は上海の単なるガイドブックではなく、人物を取り上げることで、人と本と時代のつながりがわかり、その時代の人間がどういうことを考え、どういう生きたのかも理解できます。

読み出してから、一気に読み終えました。久しぶりに軽い新書でなく、いい新書を読んだという印象が残りました。上海に興味ある方、行きたい方、もっと知りたい方にとって一読の価値ある一冊です。

上海 - 多国籍都市の百年 (中公新書)        上海オーケストラ物語―西洋人音楽家たちの夢