2つの訃報

まず、森繁久弥さんが亡くなったこと。同郷(大阪府枚方市)の岡崎武志さんがこのことについて11/10の「okatakeの日記」の「つれづれなる」で書いています。お読み下さい。

ご承知の通り、森繁さんはドラマ、テレビ、芝居等で活躍し、エッセイストとしても多くの著作を残しています。その芸能活動が高く評価され、数多くの賞を受賞しています。

< 「森繁自伝」などエッセイストとしても著作を残し、49年に菊池寛賞を受賞したほか50年、紫綬褒章、54年、芸術選奨文部大臣賞、62年、勲二等瑞宝章を受けた。59年に大衆芸能の分野で初めて文化功労者に選ばれ、平成3年、現代演劇界初の文化勲章に輝いた。>

その森繁さんが11月10日、老衰のため東京都内の病院で96歳の長寿を全うされ死去しました。心よりご冥福をお祈り致します。

次に、竹内敏晴さんの訃報です。竹内さんは9月4日に亡くなりました。享年84歳。 アンテナ@四谷書房をチェックしても、このことを掲載しているブログはありません?でした。

私は「KINOKUNIYA 書評空間 BOOKBLOG」 で知りました。そこで西堂行人さんが竹内敏晴さんの『「出会う」ということ』(藤原書店)を取り上げていました。( 詳しくは同ブログを。)

<演出家であり、教育者としても大きな足跡を残した彼は、死後、一冊の本を残した。それが「出会い」をテーマにしたこの本で、文字通り遺著となった。>

私は竹内さんに『ことばが劈(ひら)かれるとき』(思想の科学社、後にちくま文庫)という本で出会いました。この本から竹内さんを知った人がほとんどではないでしょうか。

<竹内の探し当てた鉱脈は、70年代半ば以降の「身体論」ブームを引き起こした。野口三千三の『原初生命体としての人間』(三笠書房)や市川浩の『精神としての身体』(勁草書房)と並んで、当時の演劇界にもっとも大きな刺激を与えたのが『ことばが劈かれるとき』だった。>

それ以降、<からだを解きほぐすレッスンを考案し、多くの受講生たちと一緒にワークショップを積み重ねながら、思考を深めていった。それが次々と刊行される本につながった>のです。

西堂さんはこの本を<この本はこれまでの著作と一線を画している。それは「生きる」ことへ実践的に一歩踏み出した感があることだ>といいます。

また出会いについては竹内さんの遺著から引用して、次のように書いています。

<「出会い」ということの本質的な部分は実は、話し合って何かがわかるというよりも以前に……からだとからだ、或いは、存在と存在が響き合うような次元のことで、言い換えれば「言語以前のからだ」の次元でおこっている、(マルティン・)ブーバーの言い方に従えば「全存在の集中と融合」においておこることではないだろうか……>

そして。

<彼は今年の8月29日、武蔵野芸能劇場で、『からだ2009オープンレッスン 八月の祝祭』を上演した。テーマは戦後を引き裂いてきた「戦後民主主義」を問うものだったという。車椅子に乗りながら演出した竹内は、この舞台に最後のエネルギーを投入し、燃焼し尽くした。その9日後、彼は世を去った>といいます。

合掌。

「出会う」ということ       ことばが劈(ひら)かれるとき (ちくま文庫)