鹿島茂 『歴史の風 書物の帆』

鹿島茂『歴史の風 書物の帆』(小学館文庫) は鹿島さんが1995年までに書いた書評と読書エッセイを加えて一冊にした本です。

「本書のプロフィール」には次のように書いてありました。

<本書は、一九九六年一月に筑摩書房より刊行された『歴史の風 書物の帆』を大幅に加筆修正したものです。文庫化にあたり、月刊誌『ブリオ』(光文社刊)二○○○年七月号掲載のインタビュー記事を再録いたしました。>

この文庫は本来小学館文庫としてでなくちくま文庫として刊行されてもおかしくはないと思いますが、それがなぜ小学館文庫から? この点が疑問です。

しかし、鹿島さんのこの本が文庫化されて出版されることは喜ばしいことです。ここに著者の書評の素晴らしさが凝縮していると思います。

この文庫の全般が翻訳本が中心に紹介されています。その一冊一冊に関しての読み方、書き方は大いに参考になりました。また、本の良さを書評で紹介することの意味と無意味も理解することができました。

例えば、この文庫の内容を端的に示しているのが「わが読書「体系的」読書」と「歴史書・ベスト50」です。なか見する場合はこの2つを読んで見て下さい。鹿島さんの読書遍歴と書評のエッセンスを読むことができます。

最後の解説が堀江敏幸さんとなると、この解説を読んでから上記の2つを読むのもいいでしょう。

この文庫は<書評することが、書物という「帆」を「張る」一つの方法となることを願って>書かれた、本好きのための、本好きによる、本の本です。

歴史の風 書物の帆 (小学館文庫)