ブログという表現方法

この「ブログという表現方法」は内田樹『昭和のエートス』(バジリコ)の一文です。ここで内田さんはブログがいかにいい表現方法かについて書いています。

<その点(「未来の自分」というのは「ほとんど他人」なのであるから、他人にでもわかるように書いておかないと自分のための備忘録にはならない。・・・店主引用)、ブログ日記は個人的な備忘録として最高のものである。なにしろ、もともと「他人に向けに書かれた日記」であるから、私の内情をまるでご存じない他人にもわかるように「私がどうしてこのようなことを思いつくに至ったのか」を事細かに記してある。数年前の私の脳裏に去来していたさまざまな夢想や幻影がいかなるものであったか、今の私にはいくら内面も覗き込んでも(がらんとして空虚が拡がるばかりで)とんと知る手だてとてないが、当時の私が「他人向けに」書いた説明を読むと、その理路がすらすらわかる。>

<ブログ日記を書くようになってから、こんなふうに私自身は不可逆的なしかたで経年変化を遂げているにもかかわらず、それでもやはり私は自己同一的に私であるという形而上学的不思議についてそれまでより深く考えるようになった。それがブログの書き手になったことの一番の手柄のようである。>

この本は<『「おじさん」的思考』の著者の真骨頂。いまの時代で失われてしまった<昭和的なるもの>への痛切なオマージュ。反時代的な心象に彩られた、極上のエッセイ集>です。

昭和のエートス