大村彦次郎『東京の文人たち』

昨日は大村彦次郎『東京の文人たち』(ちくま文庫)を読みました。文庫オリジナルで、百人の文人が取り上げられています。著者はこの人選について次のように書いています。

<まだ東京が江戸という町の体温を残していた時代に、その生を享けた文人たちの百人百話−。もしその中から、かつての東京人の気質や嗜好や処世のさまざまが多少なりとも浮かび上がるなら、それが本書の趣旨である。>

また人選については<業績や知名度というより、むしろ生まれ育った東京という土地への、その人なりの愛着やこだわりに重きをおいた>とも書いています。

そうし文人たちのことが1人3頁に書き込まれており、その中の<東京人としての気質や嗜好や処世>を読むにつけ、著者は東京が、東京人が、文人が好きであることが伝わってきます。

先の文章の中に、<町の体温>という言葉がありましたが、それだけでなく、著者の文人たちへの体温も感じることが出来ます。この文庫はそうした温もりのある本に仕上がっています。