小林信彦『私説東京放浪記』

小林信彦荒木経惟『私説東京繁昌記』(ちくま文庫)については昨日のブログに書きました。それに続き、今回は小林信彦『私説東京放浪記』(筑摩書房)を取り上げます。ちくま文庫を探したのですが、それがなく単行本で読みました。

これを書く発端が雑誌「Gainer」に東京について書くというものでした。この雑誌は若者向けで、確かにバブル以降の東京の変貌について、<リーダブル、読み易さ>ということに気を配って書かれた本でした。

小林泰彦さんが挿画を書き、各ページに配されていますが、そのイラストはどうもピンときませんでした。先のアラーキーの写真と比べても、何か違う。そんな思いを強く持ちました。

イラストを挿入するにはそれなりの意図があるはずなのですが、どうだったのか。著者が「あとがき」で<ぼくの文章の直接の説明>でないことを断っています。これもなにか不自然でした。(雑誌に掲載したならば写真もあるはずなのですが?)

<リーダブル、読み易さ>は著者がめざしたことなのですが、あまりにも読み易すぎる、というのが私の感想です。『私説東京繁昌記』の続編を期待しすぎていました。この本は続編というよりも、もうひとつの若者向けの東京本でした。