大岡 信 「いたましい秋」

立ちどまれ
生には与件が多すぎる
今こそぼくにはわかりはじめる
必要なのは眼そのものをぬりつぶすことだ
世界の上に見開くためには
苛酷に夢みるこころこそ必要なのだと
未来を測ることはできない だがしかし
最後の朝こそ原始の朝だと
呟く静かな意志がある