アーティスト寺田伸子さんのこと

今日雨にもかかわらず、荻窪・新宿を巡回してきました。荻窪で次の2冊を入手しました。

1 小池昌代 『屋上の誘惑』(岩波書店)
2 坂東眞砂子『愛と心の迷宮』(岩波書店)

小池さんのファンなので、同じ本が2冊あってもいいと思い買いました。もう一冊の坂東さんの本ははじめて。直木賞作家ということなのですが、まだ読んだことがありません。これが最初の一冊です。

しかし、この2冊を購入するときの決め手はカバーに使用されている装画でした。奥付の頁を見ると、装丁 丸尾靖子 装画 寺田伸子、とありました。この他に、同じ装画を見た記憶がありました。本棚を探すと、もう一冊ありました。

3 川上弘美『なんとなくな日々』(岩波書店)

寺田さんの装画はなんとも不思議な雰囲気を漂わせ、じっと正面を見つめている女性がいます。目だけがきりりとしているのですが、身体が不安そうなのか、何かが不釣合いなのか。なんとなく引かれる絵なのです。

寺田伸子さんとはどういう人か。名前で検索すると、寺田伸子オフィシャルサイトを見つけることができました。そこには寺田さんの別な作品が紹介されていました。同じ女性の絵なのですが、今度はあの視線があちこちの方向を見ています。不安定な何かとわからない不気味さを感じます。

なぜ気になるのかを考えているうちに、あのか細い人間を表現したジャコメッティを連想してしまいました。「ぼくは自分が曖昧で少しぼやけていて、まちがった場所に置かれている人間だという気がしている」(ジャコメッティ)

寺田さんの女性もそれぞれ衣服をまとっていますが、線のような人の身体を被い隠し、眼だけで生きている人間なのか。そんな思いが頭の中をめぐります。本を読む前に余計なことに引っ掛かってしまいました。

屋上への誘惑 1   愛と心の迷宮―イタリアと日本 2   なんとなくな日々 3