書評の本の取り上げ方

毎日新聞のネット書評「今週の本棚:丸谷才一・評 『小説 永井荷風』=小島政二郎・著」で、丸谷さんが少し強い口調で、冒頭から次のように書いていました。

<某社のPR誌昨年四月号に短い書評論が載って、本紙「今週の本棚」二月四日号が渡辺保による川上弘美『真鶴』(文藝春秋、一昨年十月刊)の書評をかかげたことをとがめた。どうやら遅すぎるというのらしい。(中略)
それに書評には買物案内という性格のほかに評論という局面がある。買物案内にとってはともかく、評論にとって、多少おくれるのは問題ではない。だからこそ英米の一流紙誌の書評は、半年前、一年前刊行の本を平気で取上げる。「今週の本棚」は普段は早目に書評を載せているけれど、いざとなったらその英米ふうの流儀で差支えないことにしよう>

丸谷さんの言われるように書評には「買物案内」と「評論」との両面があります。このバランスをどうとるか。某社のPR誌昨年四月号の書評論では前者をとり、丸谷さんは後者を上げ、「いざとなったら、その英米ふうの流儀で差支えない」と言っています。

私も丸谷さんの意見に賛成します。「買物案内」だけを取り上げるというよりも、いい本であったら、時期はどうであれ、遅れて取り上げても問題はないと思います。私たちはいい書評といい本を読みたいのです。

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今週の本棚:丸谷才一・評 『小説 永井荷風』=小島政二郎・著

小説永井荷風