名著古典の読書法5カ条
今日の日経新聞を読んでいると、「セカンドステージ」で「名著古典の読書法5か条」が掲載されていました。その内容は次の通りです。コメントは結論だけを表示します。
1. まず新訳の有無をチェックする
・・・書店で現物を比較すると選びやすい。
2. 訳者や校訂者の考え方を知る
・・・訳者の研究を紹介してい新書を参考に。
3. あまり原典にこだわらない
・・・できれば原文を、でも無理は禁物。
4. 人文学や社会科学にも注目
・・・アダム・スミスの『国富論』(日経新聞社)の新訳にも注目。
5. ペース配分を考える
・・・数巻の場合は次の巻が出るまでに読み終える。
光文社古典新訳文庫が新訳ブームの先鞭をつけたのですが、あのドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』が亀山郁夫訳で1巻から5巻までの合計が55万部だそうです。予想外の数字で、一番驚いているのは出版社ではないでしょうか。
この勢いで、これからも新訳本がどんどん増えてくる。柳の下に、どじょうは何匹? 読者としても、今風に読みやすく、わかりやすくあれば、その方が本に近づきやすい。そして、読者が増えれば、それに越したことはありません。
どの訳を選ぶかは読者しだいですが、柴田翔さんが言うように、訳により感動も異なる。これが微妙な問題です。そんなに感動も異なるのでしょうか。感動は共通でもあり、個人的でもあります。必ずしも一致しなくてもいいのではないか。そう思います。
例えば、訳文が異なるとどういうことになるのか。紙上で、ゲーテの『ファウスト』の冒頭文を比較しています。Aが柴田翔訳(講談社文芸文庫)、Bが池内紀訳(集英社文庫)です。
A 「献げる言葉」
「また近づいてくるのか/おぼろに揺れる影たちよ/かつて いまだ見るすべを知らなかった眼差しの前に現れたるお前たちよ」
B 「捧げる言葉」
「さまざまな姿が揺れながらもどってくる。かつて若いころ、おぼつかない眼に映った者たちだ」
わたしはBの池内訳の方を好みますが、こんなに訳文がちがうのです。行間からそのちがいを感じていただけたでしょうか。但し、こうした一部だけでは何ともいえません。感動については全文読んでから比較するしかありません。
<どちらが優れているかでなく、どちらで読んでみたいかである>
さて、皆さんはどちらを選択するでしょう。