開高健『開口一番』
やはり年に何度かは開高節を聞いています。今の携帯本は先日買った開高健さんの『開口一番』(新潮文庫)です。発行が1984年2月。開高さんの文庫はかなり集めた時期がありましたが、この文庫は未購入でした。
<夜ふけにいきづまったらパイプをとりあげ、お焼香の手つきでタバコをつめこみ、煙の糸を眺めながら、『言海』を繰ることにする。この古い辞書は?味?がある。芥川龍之介が愛読したという有名な挿話があるが、友人にたのんで古書店で探しだしてもらったのである。その黄ばんだ頁を繰りながら脈略なしに読んでいると、単語から単語へ、次々と連想飛躍が起って、愉しいのである。寝るまえの睡眠薬としても絶好である。内なる厄介なるものもこれには声をたてないでいてくれる。> p85
この文章を読んで、今年神田神保町というよりも水道橋の古本屋にあった『言海』のことを思い出しました。値段は3500円、函に入っており、良品でした。店主と話して、3000円にしてもらったにもかかわらず、なぜ買わなかったか。いま後悔しています。
ちくま文庫からも『言海』が出ていますが、文字が小さく読みづらいのです。あのくらいの文字を読まないと、とはいっても年齢には勝てません。同書を読むとなると、大判の辞書ということになります。買っておけばよかった、と再び後悔。
開高さんの言う「味」を賞味できるほどではありませんが、<単語から単語へ、次々と連想飛躍>が起こるといいます。辞書を読みながら、そうした体験をしてみたいと思います。
辞書といえば、来年1月、岩波書店から『広辞苑』の第六版が発売されます。買おうか買うまいか。どちらにしても後悔しないこと。