日曜日の新聞「読書欄」より

今日は朝日新聞の読書欄から。注目は村上春樹さんの『走ることについて語るときに僕の語ること』(文藝春秋)。この書評をしているのが、翻訳家の鴻巣友季子さん。

前にもこの鴻巣さんの書評を取り上げました。翻訳家として肩書きだけでなく、書評家としてもいい書評を書き続けています。その書評はじっくりと本を読み、その意図をしっかりと把握し、その内容をきちんと紹介しています。

それになにより、鴻巣さんの書評を読むと、その本を読みたくなるのが不思議です。それが鴻巣さんの書評力なのです。そうした書評を書く人といえば、坪内祐三さんが上げられます。その書評はいつも読書力を刺激します。

前段が長くなりましたが、鴻巣さんはこの本『走ることについて語るときに僕の語ること』を次のような作品だといいます。<「われ走る、ゆえにわれあり」− 百キロ走のウルトラマラソンではこんな没我の境地まで経験したランナー作家によるメモアールである。近年、ノーベル文学賞に最も近い日本人の一人といわれながら、寡黙を通す作家の、初の自伝作品としても貴重だ>

こうした紹介でやはりこの本を読もうと思います。一時期、村上春樹さんの本はもういいかと思い、それ以来読んでいません。しかし、この書評はそうした頑なさを解きほぐし、読んでみようという気持にしてくれます。

これが鴻巣友季子さんの書評の効力です。

走ることについて語るときに僕の語ること