北尾トロ『ぶらぶらヂンヂン古書の旅』
北尾トロさんの『ぶらぶらヂンヂン古書の旅』(風塵社)は日本各地の古本屋めぐりの旅行記です。北尾さんは「あとがき」で古本屋めぐりをなぜするのかについて、次のように書いています。
「そんなふうに、たいしたアテもなく、全国各地をぶらぶら歩きまわっているうちに人とも出会うし、予期せぬ体験もできたりする。なにより、いい店を発見し、ほしい本をつかみとる瞬間の、胸がヂンヂンたぎる瞬間がたまらない。
ぶらぶらしたい。ヂンヂンしたい。ぼくが古本旅に行く理由は、結局のところ、このふたつしかない。」
今回の「古本旅」は福岡、岡山、只見(「たもかぶ本の街」)、金沢、武蔵野線、仙台、盛岡、松本、鎌倉、茅ヶ崎、神戸、四国、札幌、小樽などを巡っています。各地で古本屋を探し、古本を買い、食事をし、現地で泊まり、次の場所へ。
行く先々で、古本屋について考え、店主や店員と語り、買った本について書いたりしています。それが楽しかったり、辛かったり。また購入本も買いであったり、流しであったり。それでも飽きさせないのは北尾さんの語りとぶらぶらヂンヂンの体験です。
古本もネットで買おうと思えば、簡単に買える時代です。古本屋の店主がパソコンにばかりかじりついて、商売した気になっているようです。店を構えている以上はネットよりもお客様とのコミュニケが大事です。
北尾さんも文中で、自分好みの品揃えでなく、お客様好みの棚づくりを必要と言っています。北尾さんの本を読んで、お客様好みをどうつかみ、どう仕入れ、どう販売するか、単純なことなのですが、これが永遠の課題。
北尾さんのように、ぶらぶらヂンヂンする本にどれだけ出会えるかが勝負です。そのためには日頃の心がけ次第ということになりますか。ちょうど、荻原魚雷さんの「文壇高円寺」の8/18「ボナンザと竜王」を読んでいて、いいことばを見つけました。(これですね!)
〈 質が変化する前には量の積み重ねが必ずある 〉
各地での購入本については一部の記載はあるのですが、できれば、各地でどんな本を、いくらで買ったか、の全品リストをつけてもらえればなおよかったと思います。