詩人の生活

文庫の整理していたら、ねじめ正一さんの『読むところ敵なし―言葉のボクシング』(ハルキ文庫)が出てきたので、読み始めました。初めは文の調子に乗れず、少々遅延ぎみでしたが、途中から快速になりました。読了。

その中で、詩人の生活を書いたエッセイ「中島みゆきの"詩"と"詞"」がありましたので、その一部を紹介します。こう書かれると、本当に詩人が詩人として生活していくことがいかに難事であるかを痛感します。

わたしは詩を書く人間である。毎日夜の八時までは店番をして、そのあと十二時ごろまで詩を書いている。このほかに、店番を途中で抜け出して二時間から三時間ぐらい詩のために当てている。合計すると一日に六時間は詩をやっている計算である。一編つくるためのに私の場合だいたい五日かかるから、延べにすると三十時間。さらに詩を書く場所代としてのコーヒー代や、遅くなったときのタクシー代を考えると、一編の詩のために使うカネは一万円ぐらいになる。ところが、もらえるカネは詩の専門誌で三千円、文芸誌で一万円といったところ。いやはやまったくの赤字である。・・・(中略)・・・ つまり、詩というものはいまのところ絶対に食えない仕事なのである。

但し、このエッセイが書かれたのが1991年です。すでに10年以上も経過していますので、現状は多少なりとも改善されているのではないでしょうか。いまだ、詩は「絶対に食えない仕事」? おそらく。しかしいまの相場が気になります。

     読むところ敵なし―言葉のボクシング