荒川洋治『黙読の山』

7/15付毎日新聞の「今週の本棚・本と人」で、荒川洋治さんの『黙読の山』(みすず書房)を取り上げていました。この本は小林秀雄賞を受けた『文芸時評という感想』以来、2年ぶりの新刊で、58編を収めたエッセー集といいます。

この紹介文の中でエッセイと詩について、荒川さん自身が次のように話しています。

エッセー集は僕にとって詩集と同じです。世の中に、詩を読まない人はいっぱいいる。そんな状況に対抗するため、一編の読みやすいエッセーという散文の形をとるのです。中身は詩ですが、エッセーの形だと読者がすっとのみ込んでくれる。エッセーの中で詩を仕掛けているということ。エッセーが読まれるのと、詩が読まれるのは僕には等価なんです。

また、荒川さんはいままでのエッセイにも書いていますが、「本当に必要な物しか書かない」というスタイルを貫いています。そして、次のように言います。

ひとつのエッセーの中で、流れが速くなる時がある。1200字のエッセーだと900字あたりかな。さっと色が変わる。その1カ所が書ければしめたもの。一瞬、浮揚する。それが命。それがない時はだめですね。

一瞬、浮揚するのは命=詩。そうした一瞬の生きた瞬間をつかむために、言語感覚を全方位に開き、感度を0にして、その瞬間を待たなければなりません。「心の鮮度」を保ちながら。

これはそんな荒川さんの最新のエッセイ集です。

文芸時評という感想     黙読の山