装幀について

Hisakoさんから「装幀家 鈴木成一さん」についてコメントをもらいました。その返答を書いて掲載しました。その中でも書きましたが、本も見た目=装幀が大事です。

これだけ多くの本が毎日出版され、本のお客様にとっても自己主張のない本は単なる紙でしょう。自己主張のある場合も本の中身が装幀に表れていないと、看板に偽りありということになります。

装幀といえどもあまり等閑にはできません。本の中身を十分把握し、その中身を装幀で同化するか異化するか。この点が装幀家の腕の見せ所です。

最近読んだ本の中から、装幀について書いた一文がありましたので、紹介します。それは田村義也さんの『ゆの字ものがたり』(新宿書房)。

のの字ものがたり     ゆの字ものがたり

たしかに、ふだん文字を画いていると、どこか武井武雄の文字と似てきたな、と思うことがある。人間の感性には、幼少年期のイメージが意識下に埋もれていて、年齢をとっても、ふいと出てくるものらしい。まあ、徒労とも思われる試行錯誤を繰り返しながら、ついに完成していくマラソン的ねばりを維持することが装幀の苦しみでもあり喜びでもある・・・

作家も一冊の本を苦しみながら創造するのと同様に、装幀家も苦しみを共有し、「マラソン的ねばり」でその本に合った装幀を創っています。

出来上がった後は、見た目=中身となるか、見た目≠中身となるかは最終的に読者の判断に委ねられます。

装幀といえば、臼田捷治さんの装幀に関する一連の本をご覧下さい。

装幀時代   現代装幀   装幀列伝―本を設計する仕事人たち