重松清『スポーツを「読む」』

先日購入した重松清さんの『スポーツを「読む」』(集英社新書)を読みました。サブタイトルは「記憶に残るノンフィクション文章讀本」です。スポーツライター39人を取り上げ、各自の代表作とその人を紹介しています。
この新書の文章はかつて集英社スポーツ誌Sportiva」に掲載されたもので、重松さんの姿勢を物語っているのが、次の一文です。これは「Sportiva」に連載の時のタイトルでした。

スポーツの「ス」はストーリーの「ス」!

山際淳司沢木耕太郎 ・・・ から始まり、ホイチョイ・プロダクションで終わる、目配りの効いた一冊です。これでスポーツノンフィクションの全般がわかります。

[取り上げているライター]

(Ⅰ)俊英たちが切り拓いたスポーツを「書く」豊饒の世界
   山際淳司沢木耕太郎玉木正之関川夏央
   ロバート・ホワイティング

(Ⅱ)「見る」という行為を文学者たちも多彩に表現する
   開高健寺山修司村上春樹三島由紀夫山口瞳
   村松友視村上龍海老沢泰久夢枕獏高橋源一郎
   ノーマン・メーラー

(Ⅲ)スポーツには「読む」名調子というものもある
   二宮清純近藤唯之、佐野稔、大橋巨泉阿久悠
   虫明亜呂無梶原一騎水島新司

(Ⅳ)対象との距離の取り方が新しい「興奮」をつくる
   金子達仁小松成美佐山一郎、後藤正治最相葉月
   夏坂健、増島みどり、小関順ニ、井田真木子、草野進

(Ⅴ)「過剰」にこだわった時、文章のワザが変化する
   ターザン山本吉田豪浅草キッド、豊福きこう、
   ホイチョイ・プロダクション

重松さんはストーリーテーラーです。軽く、さらっと、しっかりした内容。その内容が単調でなく明快で、編集も羅列でなく網羅、読みやすくわかりやすい。そこがさすがです。

3/23の朝日新聞夕刊の「文化芸能」欄で、作家 重松清さんが「「文章筋トレ」小説に集中」というタイトルで紹介されていました。

それにしても、凄まじい生活。

パソコンにつないだ二つのモニターに資料検索と執筆用に振り分けて、400字換算で月に600枚以上の原稿を書く。執筆の合間に弁当をかき込み、倒れるように眠る。

そんな毎日のなかでも、人に出会えるからと、ノンフィクションや雑誌のライターの仕事はやめないとそうです。さらに、「昨年の秋ごろから、だんだんと太く、強いことばが使えるようになってきた。今年は小説の年になる」といいます。

「売文一代」、ますます好調!

スポーツを「読む」―記憶に残るノンフィクション文章読本