池内紀『作家の生きかた』

昨日の朝刊の広告で、池内紀さんの『作家の生きかた』(集英社文庫)*1 が出版されたことを知りました。それからその文庫のことがずっと気になっていました。

街の本屋に立ち寄り、文庫コーナーを見ると、その文庫は平積みにされていのではなく、新刊紹介の棚にたった一冊立っていました。それを手に取り、レジへ。

これは集英社のPR誌「青春と読書」に「名人さがし」として連載されており、今回一人を省き、二人を書き下ろし、文庫として出版したといいます。*2

そこには、池内さんが敬愛(偏愛)する作家20人の生きかたが書かれています。多士済々、誰彼問わず、読んでみたくなる作家たちが名を連ねています。

内田百輭吉田健一太宰治堀辰雄芥川龍之介坂口安吾井伏鱒二林芙美子小川未明洲之内徹長谷川四郎植草甚一三田村鳶魚柴田錬三郎堀口大學与謝野晶子若山牧水正岡容寺山修司田中小実昌

例えば、吉田健一さんについては「飲み助」というタイトルで、吉田さんと酒の話を語りながら、次のように評しています。

 飲む話、酒の話をよく書いたが、酒を刺激剤にしたわけではない。この人の仕事はつねにふくよかで、明晰で、清潔だった。ふつうの酔っぱらいは、つまり酔っぱらいだが、吉田健一はたとえ泥酔しても紳士だった。その知性は少しも緊密の度を失わなかった。 p22

吉田健一さんの仕事について、「ふくよか」と評したのは池内さんだけではないでしょうか。こうした作家の新しい一面を多々知ることができます。

今日はこの一冊を。

作家の生きかた

*1:集英社文庫が今年30周年を迎えます。カバーデザインも変え、文字も若干大きくし、心機一転するそうです。あとはどれだけいい文庫を出せるかですね。

*2:この本はすでに『生きかた名人 たのしい読書術』として、2004年3月に綜合社から出版、集英社が発売したものです。さて、省かれた人は誰? 書き加えられた二人は誰? その一人は「おかし男」長谷川四郎。あと一人は?