岩波文庫と講談社文芸文庫

昨日の日経新聞読書欄の「文壇往来」では、「名著を文庫に残す営み、意義高く」で、岩波文庫創刊八十周年と講談社文芸文庫について触れていました。

岩波文庫は今年創刊八十周年を迎えます。1927年7月に創刊されて、今に至るまで5500冊近くの文庫を出版しています。*1

今回も文庫の最古参である岩波文庫がこの2月『岩波文庫の80年』を出版しました。その内容は刊行順全書目リストのほか、岩波文庫の創刊の意図、検閲・発禁についての「岩波文庫略史」、「岩波文庫論」が収められています。

この内容を見る限り、本好きにとっては『岩波新書の歴史』同様に、『岩波文庫の80年』は必携の一冊です。これまで80年という歳月に耐えて今に至るのも、刊行の意図に忠実に、内容を充実させ、名著を文庫にしてきた結果です。

人に歴史ありでなく、文庫に歴史あり。(新書も同様) これで、文庫も新書も出版目録を手にすることができるので、それを見ているだけでも愉しめます。目録を見ながら、本のこと、いろいろ想像するのも一興です。*2

また、講談社文芸文庫も今年で創刊十九周年、総点数800冊を超えたといいます。この文庫は「群像」の橋中雄二さんらによって1988年2月に創刊され、文学中心のラインナップになっています。

この文庫は「しっかりとした解説と丁寧な年譜・著書目録」が評判になり、今ここに至るまで継続して、出版を続けています。著者の年譜や著書目録は充実しています。

よく文庫として価格が高いといわれていますが、この点を考えると、それほどでもないと納得します。

名著・良書を文庫にということ自体意味深い、と同時に文庫はそれらを安く読めるということで普及しました。文庫はベストセラーでなく、じっくりとロングセラーをめざすべきだと思います。

*1:先に鹿野政直さんの『岩波新書の歴史』(岩波新書)では、創刊から今に至るまでの岩波新書の歴史をふり返り、巻末には総目録(1938〜2006)を付け、いままので岩波新書の全貌がわかる内容になっていました。

*2:こう書いてくると、やはり『岩波文庫の80年』は買っておこう!そう思いました。