渡辺和博さんの死

今日家に帰り、日経新聞の夕刊の「プロムナード」を読みました。嵐山光三郎さんが「渡辺和博氏の死」について書いていました。

イラストレーターの渡辺和博氏が肝臓がんで死んだ。五十六歳だった。机のスタンドの電球が切れるようにポツンと死んでしまった。

渡辺さんは三年前から肝臓がんとわかり、病院へ入退院を繰り返していたそうです。がんは後頭部まで転移し、右目はしびれて見えなくなっていたといいます。それでも嵐山さんの原稿を読み、右手だけでイラストを描き送ってきたそうです。

嵐山さんはまた書きます。

友の死は、自分の一部が死ぬのである。としをとって、友人のほとんどが死ぬと自分のほとんども死ぬのである。

そして最後に、「渡辺さんは子どものような声で、ありがとう、ありがとう、ありがとう、と奥さんにいった」といいます。

最後にありがとうを言って死んだ渡辺さんは幸せであったのではないか。本意はわかりませんが、そう思います。誰しもぽつんと死ぬことだけは厳粛な事実なのですから。