新聞の読書欄から2冊
昨日は雨、今日は晴天。賞与も出たので、今日はすごい人出でした。今年も本当にあと20日で終わります。なんとなく、今年大晦日に向かって日々加速しています。
今日の朝刊の読書欄から2冊紹介します。2冊の本は人と本とはこう出会うのかということに触れています。この文章を読むと、出会いとは不思議なものだ、と改めて思います。
人、本に出会う。本、人に出会う。
まずは朝日新聞の読書欄から、音楽評論家の黒田恭一さんが花森安治『一銭五厘の旗』(暮らしの手帖社)を取り上げていました。
ぼくは「一銭五厘の旗」をぼくの人生の絶好の時期に読んだ。ものごとに対する考え方が深くなった。書くという行為に対してより真剣になれた。花森安治という男が大好きになった。この本を読んでいるかどうかで、その人のその後の人生が大きく変わる。自分に活を入れたくなったら花森安治のことばと向きあう。
このように、本との出会いよって人生が大きく変わる。花森安治の本が、花森安治さんそのものが言葉を通して、黒田さんを大きく変えたのです。
こうした出会いがいい。本読みとしてはこうした本に、人に出会えただけでも本望でしょう。こうした出会いのために、本を読んでいるのかもしれません。
さらにもう一冊。それは日経新聞の読書欄にあった、詩人蜂飼 耳(はちかいみみ)さん*1の「半歩遅れの読書術」で、岩阪恵子さんの随筆集『台所の詩人たち』(岩波書店 2001年)を取り上げています。
そのなかで、次のように書いています。
(前略)なぜもっと早く読まなかったのかという思いが、作者の頭をよぎる。大きな出会いとなったその本とは『木山捷平詩集』(昭森社・1967年)。
ある、ある、そういう本。だが、遅かれ早かれ、出会うことができれば、そこから新しい言葉の旅がはじまる。こちらから近づいたというよりも、本の方から近づいてきたと感じるときさえある。
人との出会いが限られているように、一生のあいだに読める本の数にも限りがある。それを思えば、一冊一冊がかけがえのない世界だ。
最後の段落がいい余韻となって、心に残ります。詩人のことばへの思いが伝わってきます。この思いが原初の気持ちです。