12月3日朝日新聞の書評から

今日の朝日新聞の書評から。まず第一は音楽評論家の黒田恭一さんが「たいせつな本」で、石川淳さんの『至福千年』を取り上げ、その読み方について次のようにいいます。このように読めばいいのかと、改めて立ち止まってしまいました。

石川淳の書く語句に無駄はない。むろん弛緩もない。すべての文章は鍛え抜かれたアスリートの筋肉さながらに、一切の贅肉を削ぎ落とし、情感の水分を振り払って疾走する。読み手もまた、目には見えない手に背中を押されるようにして、一気に読み進む。立ち止まって、書かれていることの意味を考えている余裕などない。読み手は投げられたボールを目ざす子犬にも負けない熱心さで、尻尾を振り振り次のことばを追う。それが石川淳と読むということである。

また次に、中条省平さんが取り上げた、ロラン・バルト著『ラシーヌ論』の書評は強烈でした。次の冒頭の一文で、書評に引き込み、一気にに読ませてしまう。この書評はこの本を見てみたい気にさせます。さすが。

その冒頭文。これがいい。

30年も前からみすず書房の近刊予告に載っていた伝説の書物がついに姿を現した。これだけで「事件」である。

ラシーヌ論