三浦しをん『三四郎はそれから門を出た』(ポプラ社)
三浦しをんさんの『三四郎はそれから門を出た』を面白く、一気に読んでしまいました。まだ直木賞を取る前のエッセイや書評も含まれており、なかなか読ませる内容になっています。
いつでしたか、三浦しをんさんを取り上げました。が、その三浦さんが直木賞作家になるとは少々戸惑いながら喜んでいます。この戸惑いは、いわゆる「流行作家」になってほしくないなという気持ちからです。
でも、この本を読んでひと安心です。なんとなく自然体で、それほどの気負いもなければ、いやらしい強引さもありません。普通に考えて、しっかり書いている。今後大いに期待できそうな気がします。
例えば、次の一文「道具の変遷」より。
書く道具について神経質になりすぎているのは、私はアホらしいと考える。パソコンを使うせいで、小説という表現そのものが変質してしまっている、と嘆くひともいるかもしれないが、その程度で変質するものなど、思う存分変質させておけばいい。あらゆる表現は、時代とともにどんどん変形していくが、根本にある質(目指す場所)はかわるものではない、と私は思っている。p140
また。
パソコンや鉛筆を使えば、だれでも文字は書ける。カメラを使えば、だれでも映像が撮れる。しかし一番肝心なのは、文字や映像という大きな「道具」を使って、なにをどう表現するか、という点なのだ。p142
といいます。
やはり、これからの書き手として、三浦さんは注目の一人です。