デザイナー亀倉雄策さんについて(AD色部義昭)

亀倉さんのような象徴性の強い求心力のあるデザインは、いまの社会では成功しにくいんです。メディアひとつにしても、家族でテレビを囲めば満足できた頃と違い、ひとりがひとつの端末を所有して個々人に最適化された情報を求める。そこに必要なのは求心性よりも、しなやかな拡散性です。しかし、亀倉さんほどのデザインスキル、越境力、人間力があれば、現代でも何かを成しえていたでしょう。時代を変えるデザインを発信していたはずです。
「グラフィックの天才たち」ペン編集部【編】


ペンブックス24 名作の100年 グラフィックの天才たち。 (Pen BOOKS)



ADの色部義昭さんが、デザイナー亀倉雄策さんについて、上記のように語っています。それだけ個性的なデザイナーであったことは一読すれば理解できます。

さらに、印象深いのは次の箇所です。

「ひとりがひとつの端末を所有して個々人に最適化された情報を求める。そこに必要なのは求心性よりも、しなやかな拡散性です」

今の時代が求めているのは求心性でもなく、遠心性でもなく、「しなやかな拡散性」です。まさに時代を言い当てている言葉です。