今日のひと言

川瀬一馬『随筆 柚の木』(中公文庫)を読み始めています。この随筆集はすでに買ってあり、いつか読もうと思っていました。が、そのタイミングがなく、今に至っています。

昨日からの体調不良につき、横になりながら、この文庫を読んでいると、諸橋轍次さんの書いた「序」のなかで、次の箇所が意に留まりました。

但し予はここに筆を擱くに当たって、ある造園家の予に教えた言葉を想起せざるを得ない。それは日本の造園家の最も苦心する所は奇想天外の飛石の配置にあるということである。飛石は相互間にはもちろん緊密な関係が無ければならぬが、その一つ一つはまた人の思わざる所に点在して始めて雅趣を生ずるのだと云う。この事は、芸苑の打聞きとして当然君の書中に取り入れる価値があるのみならず、この飛石的落筆措辞は、また、将来君が随筆を書く場合に心すべき一方面ではあるまいか。あえて贅言を述べて請序の意の答とする。

<飛石は相互間にはもちろん緊密な関係が無ければならぬが、その一つ一つはまた人の思わざる所に点在して始めて雅趣を生ずるのだと云う。> これは実に深い。決して贅言ではない、今日のひと言です。