出久根達郎『古書法楽』からの引用

先日の棚の補充のために、本を選んでいると、何気なく手に取った本を読み始めてしまいました。いつの間にか脇道に入り、それが本道になってしまい、知らぬ間に「脱線」していることって、ありますよね。

読み始めた本、出久根達郎さんの『古書法楽』(中公文庫)。読み進めていくと、またいくつもの!に気づきます。再読して前に読んだとき気づかなかったことに気づく。これもよくあることです。

その中からの引用です。

 古本屋好みの作家がいる。売れ行きは悪いけれども、なぜか店に置きたがる。売価は概して高い。マイナーな作家が多い。
 たとえば、平山廬江。たとえば、岡鬼太郎。たとえば、正岡容。いずれも花柳界や演芸に通じ、その方面の評論随筆に長けた所が共通している。江戸や明治の東京文化に親炙した点もそう。更にそれぞれ一癖ある粋人なのもまた。
 彼らは一部に熱烈なファンをもちながら、主流たりえなかった。不遇ではなかったが、もてなされていない。それだからこそいっこくでへそ曲がりで変わり者が多い古本屋が好むのかもしれない。古本屋には昔から奇妙な判官びいき気質がある。これらの異端作家の最大の顧客は、なんのことはない、売り手たる古本屋というわけだ。 p169 


古書法楽 (中公文庫)