外山滋比古『忘却の力 創造の再発見』を読んで

外山滋比古『忘却の力 創造の再発見』みすず書房の「忘却−あとがきに代えて」p178-182 からメモをしました。

いろいろなものが頭に詰め込まれるが、全部が全部、必要なものであったりするわけがない。大事なことだけとって、残りはゴミとして出してしまう。忘却はこの分別、整理をしているのである。

ゴミ出しは不可欠である。それで、自然は先天的忘却作用を人間にそなえさせた。睡眠中に、何度か、ゴミの分別、排出の作業が行われる。レム(REM)睡眠である。それで、朝の目覚めは爽快である。頭がすっきりしている。

多量の知識を吸収する学習社会になると、情報過多になりやすく、自然忘却だけでは間に合わなくなり、忘却促進の努力が必要になる。いかにして上手に忘れるかは情報化時代にとって必須の能力であるとしてよい。

コンピュータの出現は、記憶と再生を人間のみ出来る作業であるという思い込みを粉砕してしまった。・・・・・ ただコンピューターには泣きどころがある。人間のような選択的忘却が出来ない。

では、その選択的忘却を促進する方法は次の3つだと言う。

①記憶作業をしたあと休む方法。
②寝かせる方法。
風を入れる、と言ってもよい。時間に助けてもらって忘れるのである。
③新しいことを考えること。
新しいことを覚えるのではなく、考えると、自ずと頭が整理され、その分、頭のはたらきもよくなる。

選択的忘却、これこそが人間が出来ること。どう上手く忘れるか。それに熟達してくれば、忘却力は創造力の再発見に通じると言います。であれば、記憶力の低下を嘆かず、忘れるべきことはしっかり忘れることが大事です。

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