種村季弘さんから見た岩本素白

本を整理していると思わぬ付箋に驚くことがあります。種村さんの本をまとめようとしていると、『雨の日はソファで散歩』に付いている赤の付箋が目立ちました。その付箋の箇所を見ると、なんと岩本素白について書いてありました。

その本を読んだ時に、付箋をつけたままにして、ずっと忘れていました。ひょんなことから、この一文を読み、種村さんの岩本素白の人物評がなるほどのものでした。この箇所を読んで、改めて岩本素白を再読してみたくなりました。

本との出会いは、こうした一枚の付箋がきっかけになることもあるのです。

岩本素白は国文学者(早大教授)として専門の枕草子や木下長嘯子の研究旅行で赴いた京都、戦中の疎開先の信州の紀行文も書いているが、何といっても品川宿とはじめとする東京の下町や、武蔵野の面影がのこっている郊外の散策記が絶妙である。荷風のような人の語りのこした東京を、いわば大人のなかの子供の目を通して微細に描き込んだ細密画を見る思いがする。p95
種村季弘『雨の日はソファで散歩』(筑摩書房

「いわば大人のなかの子供の目を通して微細に描き込んだ細密画を見る思い」とは種村さんの眼の確かさです。言い得て妙です。

今日で今年も終わりです。いろいろなことがあった一年でした。来年も今年同様、できうる限り沈着冷静に対処したいと思います。

そして今年お世話になった皆様、本当にありがとうございました。来年も引き続きご愛顧の程よろしくお願い致します。

徘徊老人の夏 (ちくま文庫)          雨の日はソファで散歩 (ちくま文庫)
 
 
東海道品川宿―岩本素白随筆集 (ウェッジ文庫)          素白先生の散歩 (大人の本棚)