福田和也『甘美な人生』(ちくま学芸文庫)

生きているという事自体が、その味わい嘗めつくすべき瞬間と我に反る機会の総てに於いて、甘美たりうるし、残酷な程甘い物である。此岸を「彼方」として生きる明確な意志さえあれば、人生は「甘美」な奇跡で満ち溢れる。「甘美な人生」p212

「後記」にはこの本『甘美な人生』(ちくま学芸文庫) が最初の文芸批評集であると書かれています。そして次のように記しています。

 個人的には、この最初と最後の文章だけでも読んでもらいたい。誰もが受け入れる文章ではないと思う。どちらかと言うと反発を招く、嫌われる文だろう。
 だが私にとって、このような評論集を作るということの意味、あるいは文章を書くということの真ん中にあるものが、そこにある。p215-216

ここで「最初と再度の文章」といっているものは「批評私観―石組みの下の哄笑」と「甘美な人生」です。