見田宗介『現代社会の理論』(岩波新書)

松山さんも気になる作家ですが、もう一人、気になっているのが見田宗介さん。asahi.comのBOOKでも、見田さんの現代社会の理論』(岩波新書)を取り上げていました。

この新書は1996年の10月に発行されています。それが改めていまなぜ取り上げられてのでしょう。この点は疑問です。しかし、この新書は難解な箇所もありますが、社会について考えさせられる好著であることは確かです。

見田さんはこの本のモチーフを次のように言います。

人間が歴史の中で作ってきた社会を考えてみると、当時の資本主義社会は他の社会よりましと思えた。では、なぜうまく行くのか。理論的にきちんと考えた方がいいと思ったのが『現代社会の理論』のモチーフです。

いろいろな課題のある資本主義社会ですが、それを解決する方法として消費化と情報化による可能な道筋を提示しています。

この新書では次のように言います。

本書の目的は分析であってヴィジョンのていじではないが、ほんとうに<自由な社会>の持続する形態の実現のための、条件と課題を明確化するところまではしておきたいと思う。『現代社会の理論』p124

また、次のようにも言います。

もちろん、資源の有限性、南北問題のような収奪構造など、課題もある。しかし消費化は本来、生産至上主義からの解放であるし、情報化は本来、脱・物質化であるから、両者を組み合わせれば解決は不可能ではない。

しかし、この新書では社会の理論に重点をおいたために、人間の問題までは十分論じられていません。見田さんもこの問題を「積み残し」たと言っています。

そういう歴史の「変曲点」を通過したのに、人々はまだそのことに気づいておらず、成長に依存するシステムと心の習慣から脱していない。これが現代の矛盾です。

この「現代の矛盾」を社会の面から、また人間の面からどう脱却したらいいのか。人間の問題を十分思考した上で、それを克服するための方途を提案してもらいたいと思います。

このことは『現代社会の理論』の次の展開として、現代人の孤独の問題などとともに、いま本にまとめています。

見田さんのこの本がいつ出版されるのでしょう。これにも大いに期待したいと思います。尚、見田社会学を理解するためには、まず『社会学入門』(岩波新書)を読んでから、『現代社会の理論』を読んだ方がわかりやすいと思います。

社会学入門―人間と社会の未来 (岩波新書)      現代社会の理論―情報化・消費化社会の現在と未来 (岩波新書)      自我の起原―愛とエゴイズムの動物社会学 (岩波現代文庫)



※画像について 

アマゾンの画像を見ていると、まだ不鮮明な画像が掲載されています。膨大な本を掲載しているアマゾンですから、すべて行き届いているわけではありません。

しかし、今回の見田さんの本でも、『社会学入門』と『現代社会の理論』を比べると、一目のはずです。見た人が買いたいと思うでしょうか。

見た目八割といわれる時代。それも良し悪しですが。大雑把な表示でなく、本を見たくなる、買いたくなる画像を表示してもらいたいと思います。