松浦弥太郎『日々の100』を読んで

松浦弥太郎さんの『日々の100』(青山出版社) を読みました。松浦さんはこの本で100のモノを取り上げ、それにについて語っています。それは本、文房具、サンダル、シャツ、ソックスなど、生活用品全般に及んでいます。

その生活用品の中で、私が気になるモノはもちろん本。松浦さんのほかの本を読んでいれば、何度か取り上げられた本もあります。また、今回新しく取り上げた本もあります。

ここで取り上げる本はやはり松浦さんの原点となった本。「十七歳から読み続け、いまだに飽くことなく、肌身離さず置いている二冊の本」、ジャック・ケルアックの『路上』(河出文庫)とヘンリー・ミラーの『北回帰線』(新潮文庫*1です。

松浦さんはこの2冊を「少なからず僕にとって人生を左右した本には違いない。そしてかけがえのない友人のような存在だ」とも言います。こうした本に出会えてだけでも幸せだったと言えるでしょう。

自由であること。自分らしくあること。独りであること。創造すること。夢を持つこと。誇りを持つこと。これらすべてを僕は『路上』と『北回帰線』から教わった。 p48

この『日々の100』にはこうした本のちょっといい話が10以上取り上げられています。(本だけでなく、モノについてのいい話が100掲載されています。)

松浦さんが本と出会い、本に学び、本の仕事に就き、今の立場にある。そう書くと簡単なことのようですが、そこに至る道筋は試行錯誤の連続でした。そして松浦さんは、多事多難を乗り越えて、ムリムラムダのない、軽妙洒脱な文章家になりました。

松浦さんの今までを振り返ると、COW BOOKSや「暮しの手帖」の仕事をするのも自然に思えます。これからの松浦さんの仕事に大いに期待したいと思います。

        北回帰線 (新潮文庫)


*1:
 
ヘンリー・ミラーの文庫のカバーが懐かしい。このカバーは全集のカバーと同じデザインで、下半分が反転しています。当時は全集を買おうと思っても、値段が高く買えませんでした。
 
単行本を買うにも、単行本一冊で、何冊の文庫が買えるか、均一では何冊買えるかを考え、結局、均一本を買っていました。
 
しかし、ヘンリー・ミラーの文庫はなぜか新刊書店で買いました。読んでいるうちに、カバーが破れ、裸本になってしまいました。それでも、自らコーティングをし持ち歩いていました。
 
いま本棚にあるのはその文庫です。天地小口はヤケていますが、カバーしてあったので、それほど古びていません。まだ十分読むことができます。
 
過去を思い返しながら、なぜか、あのカバーの文庫を持っていたかった、と思いました。
 
唯一持っている『ヘンリー・ミラー全集 11 わが読書』を取り出し、デザイナー、あるいは装幀家が誰かを調べましたが、その名前を見つけることはできませんでした。