鹿島茂著 『渋沢栄一1・2』

新刊で鹿島茂さんがまた大著を出版しました。それがこの『渋沢栄一1・2』(文藝春秋 各2500円)です。この本を丸谷才一さんが毎日新聞の3/27東京朝刊で取り上げ、書評を書いています。毎日jp (毎日新聞) の「毎日の本棚」より。

丸谷さんは渋沢さんのことをこう言いきっています。

<明治の精神を具現する代表的人物は誰か。政治家や軍人は幅が狭く粒が小さいし、たとえば夏目漱石はむしろ反時代的な批判者ではないか。窮したあげく明治天皇を持出す手は、何か同語反復的な滑稽(こっけい)さがつきまとうだろう。
 わたしは多年そう考えて当惑していたが、この伝記を読んで、渋沢栄一こそ明治の精神の代表者だと確信した。>

とにかくいろいろなことをやった人で、その範囲を知れば知るほど、そのエネルギーたるや、どこから出てくるのだろうと思います。また時代が人を選んだのか、人が時代を選んだのか。それを知りたくなります。

こういう書評を読むだけで、まず書店に行き、この本を手にとってみたいという欲求に駆られます。そして、書店では手にとった時の本の感触、本全体の雰囲気、本の中の文章などを判断して、買う買わないを決めます。

鹿島さんは好きな本を蒐集するために、すべてその一点のために、これからも書き続けなければならないでしょう。でも、それが一つの張り合いです。気持に張りがあるかどうか。この張りって、大事だと思います。

渋沢栄一〈1〉算盤篇        渋沢栄一〈2〉論語篇