いま一番ほしい写真集

そのきっかけ=契機は日常の中に見えないまま、あるのか、ないのか。それがいつどこで生まれるのか、生まれないのか。わかりません。それは掴まえ所がなく、掴むとすぐにすり抜けてしまいます。

風はあり、風なく。それさえわからず。

何らかの接触がよって、何らかの変化が生まれ、その変化が状況を進化させる。あるいは接触によって、状況が変化し、自らに影響する。そんな交流の中で、何かが生成します。

風が、東西南北の風が、吹いた、どこからどこへ。

「他者ありき」という前提で、この接触が引き起こす喜劇/悲劇を、そして物語を直接/間接に体験することになります。する/されるという接触を通して生成した/された何かを感知します。

風の道は一方通行か、通行止めか、相互通行か。

きっかけ=契機はいつでも・どこにでもあります。それを意識するかどうか/自覚するかどうかにかかっています。そして、自己/他者との接触とあいだの生成を実感すると、それはいつもの日常になってしまいます。

瞬間、風は向かい風から追い風に変わった。

( Kからのメール )



中平卓馬都市 風景 図鑑(マガジンワーク1964-1982)』月曜社


<1964年から1982年にかけて雑誌に発表した写真を集成。
「プロヴォーク」時代、その総括としての1970年『来るべき言葉のために』から「植物図鑑」へ、1977年の記憶喪失をはさんで、1978年の「写真原点」から翌年の『新たなる凝視』以降、現在まで続くカラー作品へ、という中平卓馬の写真の連続と切断が、この集成には写し出されている。中平にとって極めて重要な「原点」の形成過程のドキュメント。解説=清水穣。
*本書収録の写真は、発表当時の雑誌などから複写したものです。>

これがいま一番ほしい写真集です。