佐々木中−ブックガイド40選

今日は久しぶりの雨。朝は小降りかと思ったら、次第に雨が激しくなり、本降りになりました。夕方にはまた小降りになり、夜遅く霧雨に変わりました。雨は今日中に上がり、明日はまたいい天気になるといいます。

そんな一日、帰りになんとなくいつもの書店に立ち寄りました。大型書店は一巡するのに、30分以上かかります。行きつけの書店なので、見るべき所はすでに決まっています。時々道草をしますが、これもまた愉しい。

今日は先にブログで取り上げた鈴木清写真集『流れの歌』を見ました。確かに飯沢耕太郎さんのいう<映像の「純文学」>という意味がなんとなくわかったような気がしました。

鈴木清さんの写真はモノクロのせいか、全体に暗く、重い。その写真から、当時の人々の暮らしが、人の喜怒哀楽が瞬間の絵になっていました。それでも、人は生きている! という写真集でした。

それから、また書店の棚めぐり。この書店は各ジャンルごと、いろいろな企画を考え、棚づくりに力を入れています。他店と比べても、独自の棚づくりをしているという点は評価できます。

何気なく見た企画棚のひとつ、哲学の棚に、次のコピーが置いてありました。しかし、このコピー、ただのコピーではありません。

LIST OF SELECTED BOOKS BY 佐々木中佐々木中による厳選ブックガイド)
(株)河出書房新社謹製 佐々木中選書フェア特典  無断複製・転載歓迎

そしてタイトルは、

佐々木中 白熱の書き下ろしブックガイド40選
「取りて読め。筆を執れ。」
文学、藝術、革命を貫いて鳴り響く「戦いの轟き」とは何か。>

ということで、ブックガイド40選を転載します。

01. ミシェル・フーコー/渡辺守章訳 『知への意志』 新潮社 1986年
02. 中井久夫 『アリアドネからの糸』 みすず書房 1997年
   あるいは『家族の深淵』
03. 『中井久夫著作集・精神医学の経験』全巻
04. ルートヴィヒ・ウィトゲンシュタイン/黒田亘ほか訳
   『ウィトゲンシュタイン全集9』「確実性の問題」 大修館書店 1977年
05. ジャック・ラカン/小手ほか訳 『精神分析の四基本概念』 岩波書店 2000年
06. 宇佐美訳 『ランボー全集』 ちくま文庫 1996年
   あるいは鈴木創士訳 河出文庫 2010年
07. マルティン・ハイデガー/細谷訳 『存在と時間』(上)(下)
   ちくま学芸文庫 1994年
08. フリードリヒ・ニーチェ/手塚富雄訳 『ツァラトゥストラ』 中公文庫 1973年
09. フリードリヒ・ニーチェ/川原栄峰訳 『ニーチェ全集 15 この人を見よ』
   ちくま学芸文庫 1994年
10. ヘンリー・ミラー/河野一郎訳 『南回帰線』 講談社文芸文庫 2001年
11. ヘンリー・ミラー/金沢訳 『マルーシの巨像』 水声社 2004
12. メアリー・V・ディアボーン/室岡訳
   『この世で一番幸せな男ーヘンリー・ミラーの生涯と作品』 水声社 2004年
13. サミュエル・ベケット/安藤訳 『名づけえぬもの』 白水社 1995年
14. サミュエル・ベケット/安藤・高橋訳 『ゴドーを待ちながら』 白水社 2008年
15. ジェイムズ・ノウルソン/高橋康夫ほか訳 『ベケット伝』上下巻 白水社
   2003年
16. ジェイムズ・ジョイス/丸谷・高松訳 『ユリシーズ』 集英社文庫 2003年
17. リチャード・エルマン/宮田恭子訳 『ジェイムズ・ジョイス伝』
   みすず書房 1999年
18. ヴァージニア・ウルフ/伊吹知勢訳 『燈台へ』 みすず書房 1999年
   あるいは『波』
19. ヴァージニア・ウルフ/川本静子訳 『自分だけの部屋』 みすず書房 1999年
20. 坂口安吾 『堕落論』 角川文庫 2007年
21. 古井由吉 『山躁賦』 講談社文芸文庫 2006年
22. バルーフ・デ・スピノザ/工藤ほか訳 『エチカ』 中公クラシック 2007年
23. ドゥルーズ=ガタリ/宇野ほか訳 『千のプラトー』 河出書房新社 1994年
24. ジル・ドゥルーズ/宮林寛訳 『記号と事件』 河出文庫 2007年
25. モーリス・ブランショ/粟津・出口訳 『文学空間』 現代思潮新社 1996年
26. ウォルト・ホイットマン/酒井雅之訳 『草の葉』(上)(中)(下) 岩波文庫
   1998年
27. フランツ・カフカ/池内紀訳 『カフカ短編集』 岩波文庫 1987年
28. 矢内原伊作
   『ジャコメッティ』 みすず書房 1996年
29. ジェフ・チャン/押野素子訳 『ヒップホップ・ジェネレーション−
   「スタイル」で世界を変えた若者たちの物語』 リットーミュージック 2007年
30. ピエール・ルジャンドル/森元庸介訳 『ルジャンドルとの対話』 みすず書房
   2010年
31. 手塚富雄責任編集 『新装版 ヘルダーリン全集』 河出書房新社 2007年
32. ベルトルト・ブレヒト/野村修・長谷川四郎
   『ブレヒトの詩 (ベルトルト・ブレヒトの仕事) 』 河出書房新社 2007年
33. マルクス・アウレリウス/神谷美恵子訳 『自省録』 岩波文庫 2007年
34. 『ちくま日本文学038 金子光晴』 ちくま文庫 2009年
35. 『西脇順三郎コレクション1 詩集』 慶応義塾大学出版会 2007年
36. シャーウッド・アンダーソン/小島信夫・浜本武雄訳
   『ワインズバーグ・オハイオ』 講談社文芸文庫 1997年
37. 大江健三郎 『ピンチランナー調書』 新潮文庫 1982年
38. 大江健三郎 『個人的な体験』 新潮文庫  
39. 大江健三郎 『飼育』 新潮文庫
40. 磯崎憲一郎 『世紀の発見』 河出書房新社 2009年
40. 朝吹真理子 『流跡』 新潮社 2010年

40番目の二人について、佐々木さんは次のように書いて、このブックガイドを締めくくっています。

<この二人の作家の来し方行く末に注目し続けなくてはならない。ここで日本語は、まだ未来に向けて脱皮しようと震えている。>

最近読んだブックガイドのなかで、一番よかった! コピーなのですが、一冊ずつ、佐々木さんのコメントが付いています。ぜひ、手にとって見てください。ほしい方はジュンク堂新宿店7Fに置いてあります。

切りとれ、あの祈る手を---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話     世紀の発見     流跡



左:佐々木中『切りとれ、あの祈る手を ---〈本〉と〈革命〉をめぐる五つの夜話』 河出書房新社