原研哉「欲望のエデュケーション」
岩波書店のPR誌『図書』の執筆陣が充実でいる。そう感じるのは私だけでしょうか。例えば、7月号の目次をご覧下さい。大江健三郎さんをはじめ、そうそうたる方々が名を連ねています。
例えば、原研哉さんの「欲望のエデュケーション」が連載されています。その11「持たないという豊かさ」には、次のように書かれていました。
原さんは言います。<ものを所有することが豊かであると、僕らはいつの間にか考えるようになった>。それから「持つ豊かさ」と「持たない豊かさ」についての話が展開していきます。
そして、最後にこう書きます。
<持つよりもなくすこと。そこに住まいのかたちを作り直していくヒントがある。何もないテーブルの上に箸置きを配する。そこに箸がぴしりと決まったら、暮らしはすでに豊かなのである。>
箸置きと箸がぴしりと決まること。これが大事なのです。そうであれば、住まいのかたちのみならず、住まいの中身=暮らしも、すでに豊かなのです。持つ豊かさから、持たない豊かさへ。
ウィスキーのメーカーの、あのコピーを思い出しました。<何も足さない、何も引かない。>これもぴしりと決める条件か。ある詩人はHave (持つこと) ではなくBe (あること) を、と書きました。これもまた ・・・・・ 。
「持たない豊かさ」がおそらく目前にあるのですが、欲望が邪魔をする!その欲望をどう教育していくのか。これが原さん連載の「欲望のエデュケーション」のテーマです。