フランクル『夜と霧』の書評

小尾俊人さんの新刊『昨日と明日の間(編集者のノートから)』のなかで、<ロングセラー『夜と霧』>に感銘を受けました。


昨日と明日の間―編集者のノートから



この本、フランクルの『夜と霧』(みすず書房)は発売以来、同社の重版書のベスト一位の地位をずっと継続維持していると言います。また出版社が特別な広告をするわけでもないのに売れているのは口コミのせいだとも言います。

それだけこの本には魅力があるのです。それが広告以上の感動を生みます。それが人から人へ共感の輪を広げます。例えば、野上彌生子氏の書評がそのいい例です。こうした気持ちの入った書評が読者をこの本に誘います。

<この恐ろしい書物にくらべては、ダンテの地獄さえ童話的だといえるほどである。しかし私の驚きは、ここに充たされているような極限の悪を人間が行ったことより、かかる悪のどん底に投げ込まれても、人間がかくまで高貴に、自由に、麗わしい心情をもって生き得たかを思うことの方に強くあった。その意味からフランクル教授の手記は現代のヨブ記とも称すべく、まことに詩以上の詩である>


夜と霧 新版        夜と霧―ドイツ強制収容所の体験記録



※左は新版、右が旧版。私は旧版のカバーの方が好きです。