紀田順一郎さんのHP

先に紀田順一郎さんのHPがリニューアルされたとの記事を書きました。それ以降、新着情報が日々追加されるようになりました。自著含め本についての記事は大いに参考になります。

最近の記事から「書物、何処へ」で、紀田さんは次のように書いています。

<現在の書物は道具以下の単なる“情報”になり下ってしまった。書店の店頭は政治、経済の扇情的な解説書(「日本は三流国家になる!」)や、健康、福祉、介護など四苦八苦な生活マニュアルで溢れ返っているが、その必要性はともかく、いずれも一過性の情報としかいえないものだ。出版の底が浅くなるのは当然だ。>

<いまや出版業界は、キンドルiPadのような電子器具に席巻されようとしているが、このさい表面的な動向に一喜一憂するのでなく、書物文化の備えていた普遍性、基本的要素(精神性、人格性)をいかに継承していくか、腰を据えて考えるべきではないだろうか。>

この記事から、「一過性」「浅い」「表面的」等のことばを見つけることができます。<今日、書物は同じ道具でも、目先の問題だけを解決する使い捨ての道具>になってしまったといいます。指摘の通り、その傾向は強まるばかりです。

今年はキンドルなどの普及に伴い、デジタル本も増える予想ですが、元々の書物はこれからどうなるのか、先が見えません。時のスピードの追われ、じっくり考える時間もなく、売上至上に走ることは致し方のないことです。

しかし。

紀田さんが警鐘を鳴らしている点 (書物文化とその継承の問題) を出版社、書店、読書人が考えていかないと、文化という木の根が細くなるばかりです。そして枝振りの悪い、貧弱な木しか見ることができなくなります。

「書物、何処へ」。この記事をもう一度じっくりと読み直したいと思います。

彷書摘録―時代をつなぐ読書

紀田順一郎『彷書摘録』(松籟社)