古波蔵保好さんのちょっといい話
年末までに文庫の整理をしようと思い、今日文庫を少し片付けました。バベルの斜塔を崩し始めると、いままで買って忘れていた文庫が何冊も出てきました。
例えば、鷲田清一さんの次の文庫などは読もうと思ったまま埋もれてしまったものです。
ひと山崩し、次にまたとやっていくと、切りがなくなります。どこかで終わらねばと思いつつ、またこんな文庫があったと、それを手に取り読み始めます。本当に終わりのない作業です。
そんな中で、性懲りもなく読み始めたのが村松友視( 名前の「視」が表示できません。)さんの『おんなの色気 おとこの色気』(ランダムハウス講談社文庫)です。
この文庫には、植草甚一さんを取り上げたものがあり、それをまず読み始めました。読み終わり、次に「モダンボーイの悠々たる反骨精神 古波蔵保好」という一文がありました。
古波蔵保好さんは名前は知っていても、いままで古波蔵さんの本を読んだことがありませんでした。どんな人なのか興味があり、読み始めました。
すると、次のような鯨岡阿美子さんとの出会いの話が書いてありました。< ある日古波蔵さんは、鯨岡阿美子さんから“夕食をつき合え”と突然の電話があった。食事をしてコーヒーを飲んで別れようとすると、「送ってくれないの?」と言われ、四谷三栄町にあった鯨岡阿美子さんの家へ送った。今度は“お茶でも飲んでいけ”と誘われた。次に彼女の年代物らしい、裾に穴の開いているガウンに着替えさせられた。着替えを手伝っているとき、古波蔵さんの躯の熱の高さに気づいた鯨岡さんが、「熱があるわね、大変よ。暖かくしてあげるから寝なさい」とベッドへせきたてた。実は、風邪をこじらせていたのだった。そのベッドはダブルサイズ−といことで一夜が過ぎ、古波蔵さんはそれからずっと鯨岡さんの家に居つづけ、歳月が経っていった。>
村松さんの古波蔵さんについての文章を一読した時に、この話が妙に印象に残りました。こうした出会いもあるのです。ちょっといい話だと思うのですが、どうでしょう。