草森紳一さんの『本の読み方』

昨日のyomunelさんへのコメントで次のように書きました。

<今日新宿の書店に行き、草森紳一さんの『本の読み方 墓場の書斎に閉じこもる』を買ってきました。読み始めたら、あっという間に時が過ぎてしまいました。最近の本についての本の中では申し分なくいい本だと思いました。
あの表紙の写真ですが、「迂路探検」によりますと、愛娘Eさんであるとか。この本の写真は草森さんが撮影していますが、その中でも出色でした。>

草森さんの本はたいへん間口が広く、奥行きがあるので、一般的には取っつきづらい印象を与えてしまいますが、この本を読むと、その印象が一変します。

そう、わかりやすい、理解しやすい。取り上げる人も本も多士済々、多種多様で、そのコメントも!(なるほど)なのです。本好きにはたまらない一冊となっています。

例えば、次のような箇所。

<「読書」といえば、すぐに人は、その本の中に何が書かれ、それに対して、何を感じたかばかりを考えたがる。私も、「書評」をたのまれると、ついそうなってしまうのだが、生活の中の読書は、そんな大袈裟なものでない。
 もっと、いろいろな場所で、いろいろな時間帯の中で、いろいろな状況の中で、人はいろいろな格好をしながら、自由で、かつ不自由な「本の読み方」をしている。
 しかも、つねに中断の連続であり、時にその中断により、寅彦がそうであった如く、本の内容とはまったく別なところへ引きずり込まれ、うむと考えこんだりもする。快なる哉。
 これこそが、一日たりとも、私が本を「手」から話せない大きな理由(いいわけ)でもある。>

いいじゃないか、最短の道を歩かなくても。寄り道があっても、回り道があっても。まったく違う道を歩いてても。もっと気軽に、自由に、愉しく読書をしよう。そう言っているように思います。

この本、私にとってこの夏の「快なる哉」なのです。