「追悼 加藤周一」より

平凡社の「月刊百科」4月号で、「追悼 加藤周一」と題して加藤周一さんを取り上げていました。日高六郎板垣雄三小森陽一、鷲巣力さんらが、加藤さんについて書いていました。

そのなかで、鷲巣さん(ジャーナリスト)の追悼文が印象に残りました。

<思うに「言葉と人間」は、加藤さんが生涯大切にし続けてきたふたつのものである。言葉の力を信じ、言葉の力に賭け、美しい言葉を好み、美しい言葉で表した。そして、人間の可能性を信じ、人間のつくり出したものを尊び、人間のなしたことを敬し、人間のつくり出したものを愛した。それは一貫して変わらなかった。>

さらにまた。

<そんな加藤さんの棺には三冊の書が収められた。すなわち、フランス語版『聖書』、ドイツ語版カントの『実践理性批判、それに岩波文庫版『論語』である。「これだけあれば退屈しないと思って」と、長年ともに歩んでこられた矢島翠さんはつぶやいた。>

鷲巣さんはこの三冊を選んだ矢島さんの見識に脱帽しています。

わたしもなるほどと納得してしまいます。この選択にこそ矢島さんの加藤さんへの思いが表れています。こういう人がいただけ、加藤さんは幸せであったと思います。